【管理栄養士より】便秘で悩む高齢者への食事支援方法

高齢者の食事

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高齢者施設で勤務していると、排泄に悩む高齢の方を支援する機会がとても多いです。

特に便秘で排便に悩む方は、排泄が十分にできないことから食欲が低下したり生活リズムが乱れることで体調を崩したりすることがみられます。

高齢の方はこのちょっとした体調の変化が予後に大きな影響を与えかねません。

ここでは便秘の高齢の方向けの食事のポイントや支援方法を紹介しています。

便秘症とは

慢性便秘症診療ガイドライン2017では便秘症を以下のように定義しています。

本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態

慢性便秘症診療ガイドライン2017

わかりやすい症状としては、お腹に違和感があり排泄したくても十分に排泄できずに排泄の回数が少なかったり、便が固く排泄が難しかったりすることで

お腹が痛かったり、お腹に張りがあったりします。

特に高齢の方は腸の動きが弱くなったりお腹に力を入れにくくなったりで便秘になりやすいです。

また、排泄はひとの身体にとって不要なものを体外に排出することなので、高齢者の方に排便をおこなえるように支援することは重要となります。

慢性便秘症診療ガイドライン2017では便秘の分類を以下のようにしています。

  • <排便回数減少型>
    • 大腸通過正常型便秘症
    • 大腸通過遅延型便秘症
  • <排便困難型>
    • 便排出障害

(1)大腸通過正常型便秘症

大腸の蠕動機能は正常であり、そもそも便の量が少なくて排泄回数が減少している状態です。

排出するまでの便量が溜まるまでに時間がかかり、便の滞留時間が長くなるので便が固くなり排出しにくくなります。

(2)大腸通過正常型便秘症

大腸の大蠕動機能が弱まることが原因で排泄回数が減少している状態です。

腹部には便が溜まっているのでお腹の張りや痛みがあったり、便が固くなって排出しにくくなります。

(3)便排出障害

排便するときに使う筋肉の低下により排泄しにくくなったり、直腸に瘤があり排泄を阻害したりする等で十分に排泄しにくい状態です。

便秘には食物繊維を摂ると良い?

日本食事摂取基準2020において、食物繊維を摂ることで便秘の改善に寄与する可能性があることが記載されていますが、明確に食物繊維が排便状況の改善に効果があると示されてはいません。

これは、食物繊維を摂ることが全ての便秘症に効くわけではないためとみられます。

便秘症の種類のうち大腸通過正常型便秘症のみ食物繊維の摂取が有効です。

大腸通過正常型便秘症は、食事を摂ることが少なく腸の中を通過する食事の量も減ることで、便量も少なくなり便秘となります。このため、食物繊維を摂ることで便量を増やし排泄を促すことができます。

一方で、大腸通過遅延型便秘症や便排出障害は便量が少ないことが便秘の原因ではないため、食物繊維を摂ることは有効ではありません。

便秘の高齢者への食事支援の方法

便秘の高齢者への食事支援は、食事量が少なく便量が十分でない場合の大腸通過正常型便秘症に有効です。食事支援では以下のポイントをおさえておきましょう。

①食事が十分に摂れているかチェックする

まずは、普段の食事から十分に食事が摂れているかをチェックします。

食事を摂る量が少ないと、その分便の量が少なくなるので排便の機会も減ります。

高齢の方の食事チェックポイントは以下にまとめていますのご参考ください。

②食物繊維を多く含む食事を摂るよう支援する

日々十分な食事ができているかを確認したら、次に食事を十分に摂れるよう支援します。特に食物繊維を多く摂れるよう食事支援をおこないましょう。

食物繊維は主に野菜や果物、きのこ類などに多く含まれています。

ただ、食事支援として単純に野菜や果物を多く摂ればよいわけではないです。

食事は便秘の改善だけを目標としているのではなく、日々の健康の維持や低栄養の予防など食事の目的は多岐に渡ります。

そのため、栄養のバランスを整え十分な栄養素を摂りながら食物繊維も摂ることが現実的です。

便秘に有効な食事ポイントは以下に詳しくまとめていますのでご参考にしていただき、糖質や脂質、たんぱく質といった基本的な栄養素を適切に摂りながら、併せて食物繊維を摂る食事支援をおこなってください。

また、食事の量が顕著に不足する場合は低栄養リスクを考慮した食事支援を優先します。

食事の不足は便秘症だけでなく、低栄養を引き起こし予後に悪い影響を与えてしまいます。

低栄養の予防のために必要な食事の支援は以下をご参考ください。

③水分を十分に摂るよう支援する

便秘症になると、腸の中に便が溜まっている時間がながくなることで便が固くなってしまいより排便がしにくくなります。これは便が腸の中に溜まっている間に、便の中の水分が体内に吸収されるため便が固くなります。

また、高齢の方は年齢とともにのどの渇きを感じにくくなるので、水分を摂ることが少なくなり脱水になりやすくなります。

普段から意識的に水分摂取をするよう支援しましょう。

高齢の方におすすめの水分補給方法は以下のページをご参考ください。

まとめ

○全ての便秘の改善に食物繊維の摂取が有効ではない

○食事支援は大腸通過正常型便秘症の場合に有効で、栄養バランスを整え十分な食物繊維を摂るよう支援する

○高齢の方は水分の摂取を意識する

以上、便秘で悩む高齢者への食事支援方法について紹介しました。

繰り返しますが、一言に便秘といっても全てもの便秘に食事支援が有効ではありません。

便秘の種類は一般では判別できないので、便秘に悩んでいたら一度医療機関を受診し、食事支援で改善される便秘症なのかを診てもらいましょう。

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