第38回 管理栄養士国家試験
19 生体エネルギー源と代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)ヒトは、独立栄養生物である。
(2)クレアチンリン酸は、高エネルギーリン酸化合物である。
(3)ATPの産生は、同化の過程で起こる。
(4)電子伝達系では、二酸化炭素が産生される。
(5)脱共役たんぱく質(UCP)は、ATPの産生を促進する。
正解 (2)
× (1)ヒトは、独立栄養生物である。
〔解説〕ヒトは、従属栄養生物である。
独立栄養生物…無機物から有機物を合成して生活する生物
従属栄養生物…独立栄養生物が合成した有機物を生体内に取り込んで生活する生物
○ (2)クレアチンリン酸は、高エネルギーリン酸化合物である。
〔解説〕高エネルギーリン酸化合物とは、高エネルギーリン酸結合をもつ化合物で、加水分解されたときに多量の自由エネルギーを産生する。
クレアチンリン酸は大部分が骨格筋に存在し、瞬発的な運動時にはクレアチンキナーゼによってクレアチンとリン酸に分解される。この時クレアチニンキナーゼはクレアチンリン酸のリン酸をADPに転移してATPを合成し、筋肉のエネルギーとして利用する。1段階の反応で酸素も必要としないので、瞬発的にエネルギーを産生できるが、筋肉内のクレアチンリン酸は微量しかないので10秒程度で枯渇する。
高エネルギーリン酸化合物はほかに、ATP、GTP、解糖系ではホスホエノールピルビン酸(PEP)、1,3-ビスホスホグリセリン酸などがある。
× (3)ATPの産生は、同化の過程で起こる。
〔解説〕ATPの産生は、異化の過程で起こる。
同化とはエネルギーを使って無機物から有機物を合成する(=栄養素を取り入れる反応)、異化とは有機物を分解してエネルギーを得る(=栄養素を使う反応)である。
ATPの産生はミトコンドリアで有機物を二酸化炭素と水に分解する反応で、異化である。
× (4)電子伝達系では、二酸化炭素が産生される。
〔解説〕電子伝達系では、ATPと水が産生される。
NADH、FADH2は電子を放出し、複合体に渡す。電子はそれぞれの複合体を通過し、最終的にO2と反応して水となる。(下の図参照)
解糖系やクエン酸回路では二酸化炭素が産生される。
× (5)脱共役たんぱく質(UCP)は、ATPの産生を促進する。
〔解説〕脱共役たんぱく質(UCP)は、ATPの産生を抑制する。
ATPは電子伝達系でできたH+の濃度勾配を利用して合成される(酸化的リン酸化)が、脱共役たんぱく質はこれを阻害して、代わりに熱を生み出す。
電子伝達系でできたH+がミトコンドリア内膜を通過するのは、ATP合成酵素か脱共役たんぱく質を介した経路がある。脱共役たんぱく質はATP合成を伴わずにH+を膜管腔からマトリックスに輸送するので、ATPの産生は抑制されていることになる。